掛け軸の保管方法

掛軸は湿気や直射日光を嫌います。掛軸をしまうときは、よく晴れた湿気のない日を選びましょう。より安全に掛軸を保管するための道具を紹介します。

【太巻】絵具が厚く塗られた作品や細く巻くと破損が生じるおそれのある掛軸に用いられるのが太巻です。これを軸の芯にして巻くことで太く巻け、前記したおそれが解消されます。

【軸箱】掛軸を保管、あるいは携帯するときの箱です。蓋の形状により数種類ありますが、材質は主に桐。軽いのに強度があり、温度や湿度を一定に保つなどの特徴が、軸箱に適しているといわれます。

【揉み紙】掛軸を箱に収納する際に、軸を保護するために包む紙です。紙は揉んで柔らかくしたものが使われます。 揉み紙以外にも 羽二重などもあり、また、ウコンで染めた木綿布で包まれることも。

掛け軸の名称

本紙
掛軸に仕立てる書画のことだが、紙の作品だけでなく例えば絹に描かれたものも本紙という。

天地 (てんち)
中廻しの上下にあたる部分で、上部は「天」、下部は「地」というが、「上下」とも呼ぶ。無地や柄の目立たない裂を使うことが多い。また、中廻しも天地も同じ裂で続けて表装されている場合 は「総縁」(そうべり)という。

一文字(いちもんじ)
本紙の上下に細長くついた裂。 一般的に最も格の高い裂が用いられる。

中廻し(ちゅうまわし)
本紙一文字を囲む部分をいう。一文 字に次いで、格が高い裂が用いられ、「中縁」(なかべり・ちゅうべり)ともいう。中廻しの上部を「中廻し上」、下部を「中廻し下」といい、左右を「柱」と呼ぶ。

筋(すじ)
本紙と中廻しの間や天地の裂の見切りに用いる細い裂。

風帯(ふうたい)
天と中廻しの境まで下がっている細い 帯状の裂。通常は一文字と同じ裂が用いられる。中国では燕よけに実用としてつけられたが、日本では装飾物として形式だけが残った。

露(つゆ)
風体の下部につける総の飾り。風帯を扱うときに持つ実用性もある。

八双(はっそう)
最上部につく半月状の棒。軸を吊り下 げ、掛軸全体を支える。

掛緒(かけお)
掛軸を掛けるためのひも。

巻緒 (まきお)
掛軸を巻いておくひも。

環(かん)
掛緒を止める金具。頭部の釘の部分と座金の部分で成り立つ。

軸棒(じくぼう)
最下部につけ、掛けるときは重しに、軸を巻くときは芯になる棒。

軸先(さき)
軸を巻くひろげるときに役立ち、また、装飾的な意味も持つ。

掛け軸の様式

【大和仕立】
■本紙が信仰の対象:「真」
仏教に関わる書画の軸装に用いる様 式で、礼拝や儀式のためのもの。厳重厚が特徴。本紙の周囲を中廻しで囲み、さらに天地の裂で囲みます。「真・行・草」に分けられます。

■本紙は鑑賞が目的:「行」「草」
鑑賞を目的とした本紙の表具には、天地・中廻し・一文字があり、中廻しの柱が太いのが「行」、細いのが「草」の表具。「行」はさらに「真・行・草」に、「草」は「行・草」に分けられます。 一文字がついたものを三段表具、省略されたものを二段表具と呼びます。

【文人仕立】
文人画に多く用いられたことからこう命名されました。その様式には丸表具、袋表具、明朝仕立などがあり、ほとんどの場合風帯をつけません。

掛け軸のかけ方

①巻緒を解き、巻紙を取る。巻緒が正しく結ばれていれば、右の紐を引くだけで解ける。また、巻紙は巻緒の擦れから掛軸を守る紙。

②掛軸の本紙が見えない程度にひろげる。掛ける際に、もし落下事故が起きても本紙に及ばないための対処。掛緒の真ん中を矢筈(やはず)の先に掛ける。

③利き手と逆の手で軸中を受けて持ち、利き手で矢筈を持って、掛緒を掛け金具に掛ける。

④矢筈を外して、両手で軸端を持ち、ゆっくりとおろす。最後まで軸先の手は離さないように。

掛け軸のしまい方

紐 (巻緒) の巻き方
巻き方にも種類があるが、一番シンプルな 巻き方を紹介。掛軸は強く締めつけずに、少しゆったりと巻ましょう。
巻緒を左から右へ3周巻く。(巻紙があればつけてから行う)。巻緒を掛緒の下から通し、輪をつくり、輪の先を掛緒の下に。輪を左の掛緒の下にもぐらせる。最後に左右の長さを調 整する。巻緒がねじれないように注意を。

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